「良い姿勢」より大切なこと

身体は同じ姿勢を続けるようにはできていない
姿勢を良くしようと思うと、背筋を伸ばして、その状態をできるだけ保とうとすることがあります。
けれども身体にとって大切なのは、ひとつの正しい姿勢を長く続けることではないようです。
座っている時も、立っている時も、身体は少しずつ位置を変えながらバランスを取っています。
疲れてくると座り直したくなったり、立ち上がった時に背伸びをしたくなったりするのも自然な反応です。
良い姿勢を保つことより、身体をひとつの形に固定しすぎないこと。そのほうが、私たちの身体には合っているのかもしれません。
正しい姿勢はひとつではありません
背筋を伸ばし、肩を後ろに引き、顎を引く。
一般的に良い姿勢というと、このような姿を思い浮かべることが多いでしょう。
もちろん、無理のない姿勢を意識することは大切です。ただ、人によって骨格や筋肉のつき方、身体の柔軟性は違います。そのため、すべての人に共通する理想的な姿勢をひとつに決めることは簡単ではありません。
また、見た目にはきれいな姿勢でも、長時間そのままでいれば、同じ筋肉や関節を使い続けることになります。
少し背中を丸めたり、椅子に深く座ったりすることを必要以上に気にするより、身体が楽に感じる位置をときどき変えていくほうが自然です。
じっとしている時も身体は動いています
まっすぐ立っているつもりでも、人の身体は完全に静止しているわけではありません。
わずかに前後左右へ揺れながら、筋肉や関節を使ってバランスを取っています。座っている時にも、無意識に腰の位置をずらしたり、脚を組み替えたりしています。
こうした身体の小さな変化は、負担が同じ場所だけに集中するのを避ける働きにも関係すると考えられています。
長い会議で座り直したくなることも、飛行機の中で脚の位置を変えたくなることも、身体が自然に行っている調整のひとつです。
貧乏ゆすりにも意外な一面があります
長時間座っている人を対象にした、少し面白い実験があります。
参加者には数時間座り続けてもらい、片方の脚だけを一定の間隔で小刻みに動かしてもらいました。その結果、動かさなかった脚では血管機能の低下が見られた一方、動かしていた脚ではその低下が抑えられたという報告があります。
動きとしては、いわゆる貧乏ゆすりに近いものです。
もちろん、貧乏ゆすりを健康法として勧める研究ではありません。
ただ、本格的な運動だけでなく、脚の筋肉を小さく動かすことでも身体の中には変化が起こる、という点は興味深いところです。
数分の動きにも意味があります
パソコンで仕事をしていると、気づかないうちに一時間、二時間と座り続けていることがあります。
長時間の座位についてはさまざまな研究が行われており、座っている途中で短時間歩くことで、食後の血糖値や血圧などに良い変化が見られたという報告もあります。
考えてみれば、私たちは普段から、ずっと同じ姿勢のままでいるわけではありません。
飲み物を取りに立ったり、トイレまで歩いたり、電話をしながら身体の向きを変えたり。長く座っていると、自然に伸びをしたくなることもあります。
こうした何気ない動きは、健康のために意識して始めたものではありません。それでも身体は、同じ状態が長く続くと、無意識のうちに姿勢を変えたり、少し動いたりしながら負担を調整しているのでしょう。
普段何気なくしている小さな動きにも、身体にとってはきちんと意味があるようです。
立ち続けることも身体への負担に
座りっぱなしが良くないと聞くと、立っている時間を増やしたほうが健康に良いように思えます。
しかし、長時間立ち続けることも、脚や腰などに負担がかかります。
最近では、デスクの高さを自由に変えられる昇降式デスクもよく見かけるようになりました。こうしたデスクの良さは、立ったまま仕事をすることではなく、座ったり立ったりしながら姿勢を変えられることにあります。
座ることと立つことのどちらが良いかというより、同じ姿勢を長く続けないこと。
身体にとっては、その時々で姿勢を変えられることのほうが大切なのかもしれません。
身体の小さなサインに気づいてみる
肩が重くなってきた。
腰の位置を変えたくなった。
脚を伸ばしたくなった。
そんな時、身体はすでに次の姿勢を求めているのかもしれません。
無理に背筋を伸ばしたまま我慢する必要はありません。少し座り直したり、一度立ったり、数歩歩いたりするだけでも身体の使い方は変わります。
デスクワークの途中でも、長いフライトの機内でも、自宅でゆっくり過ごしている時でも、ときどき身体の感覚に意識を向けてみる。
良い姿勢を完璧に保とうとするより、身体が動きたくなった時に少し動かしてあげる。
毎日のウェルネスは、そんな小さなところから始めてもよいのではないでしょうか。
