世界のマッサージをめぐる旅—第7回 ココナッツ・ポルティス・マッサージ

温かなココナッツの恵みと、古代から受け継がれる植物療法
南国の果実として知られるココナッツは、食用だけでなく、肌のお手入れにも古くから利用されてきました。そのココナッツを温め、身体をほぐすマッサージがあることをご存じでしょうか。
今回は、布に包んだココナッツを使うユニークな施術と、その背景にある植物療法の歴史をご紹介します。
ココナッツ・ポルティス・マッサージとは
ポルティス(Poultice)とは、植物などの素材を布で包み、身体に当てる湿布状のものです。マッサージでは、ハーブボールのように丸く包んだものを温めて使用します。
ハワイのマンダラスパでは、天然ココナッツを使ったポルティスを適温に温め、身体に押し当てながら施術を行います。途中にはセラピストの手によるマッサージも取り入れ、東洋と西洋のマッサージ技法を組み合わせながら、弱めから中程度の圧で身体のツボにも働きかけるのが特徴です。
ココナッツ・ポルティスの興味深いところは、温めることでココナッツに含まれる天然の油分が布の表面ににじみ出ることです。温かなポルティスを身体に当てることで、肌に潤いを与えながら筋肉の緊張を和らげていきます。
ココナッツの油分には、肌の水分が逃げるのを抑える働きがあるラウリン酸などの脂肪酸が含まれています。肌を柔らかく保つためのスキンケアにも利用されている成分です。
セラピストの手による滑らかなマッサージと、温かなポルティスを使った柔らかな圧を組み合わせることで、それぞれ異なる心地よさを味わえます。身体をほぐしながら肌の保湿も楽しめるトリートメントです。
温かなポルティスがもたらす心地よさ
ココナッツ・ポルティス・マッサージの特徴は、温かさだけでなく、布に包まれたココナッツが身体に触れる独特の感触にもあります。
セラピストの手によるマッサージとは異なり、丸みのあるポルティスを押し当てることで、柔らかな圧が身体に伝わります。温かなポルティスをゆっくりと動かすことで、心地よい刺激とともに身体の緊張がほぐれていきます。
特に、肩や背中のこわばりが気になる方、強い刺激が苦手な方、ゆったりとしたリラクゼーションを楽しみたい方におすすめのトリートメントです。
ポルティスの原型は古代ギリシャにも
ポルティスという言葉は、英語では湿布や貼り薬のようなものを意味します。その歴史をたどると、古代の外用療法に行き着きます。
紀元前5世紀頃の古代ギリシャでは、植物や蜂蜜、油などを患部に用いる方法が知られていました。医学の父と呼ばれるヒポクラテスの時代には、身近な自然の素材がさまざまな手当てに利用されていたのです。
その後のヨーロッパでも、亜麻仁やカラシなどを用いた湿布が使われました。現在のスパトリートメントとは目的も方法も異なりますが、植物を身体に当てるという発想には共通するものがあります。
タイで発展したハーブボールの伝統
アジアにも、植物を布に包んで身体に当てる伝統があります。その代表が、タイのルークプラコップと呼ばれるハーブボールです。
タイのハーブボールには、プライというショウガ科の植物をはじめ、ウコン、レモングラス、コブミカンの皮などが使われます。これらを布に包み、蒸して温めたものを身体に押し当てます。
植物の組み合わせは地域や施術者によって異なり、タイの伝統医療では長く親しまれてきました。現在でも、伝統的なタイマッサージと組み合わせて使用されることがあります。
古代ギリシャの湿布療法とタイのハーブボールが直接つながっているわけではありません。それぞれの土地で手に入る植物を利用し、独自の方法が育まれてきたのです。
現代のスパに受け継がれた植物の知恵
かつて身体の手当てに使われていた植物の湿布は、現在ではリラクゼーションや美容を目的とした施術にも応用されています。
タイのハーブボール、ココナッツを使ったポルティスなど、素材は異なりますが、植物の成分と温かさを身体のケアに生かす点は共通しています。
古くから人々の暮らしに根づいてきた植物の知恵は、時代とともに姿を変え、現代のスパにも息づいています。南国のココナッツを使ったポルティス・マッサージも、その魅力を感じられるトリートメントの一つです。
