楽しみな予定があるだけで、少し元気になれる

旅を待つ時間にもある、心のウェルネス
夏も後半に入り、これから旅行を控えている方もいれば、すでに旅を終えた方もいらっしゃる時期です。
不思議なのは、旅行の幸福感は旅先だけで生まれるわけではないということです。
出発を待つ時間にも、私たちの心は少しずつ楽しさを感じ始めています。
旅行は、出発する前が意外と楽しい
ホテルを探している時、レストランを調べている時、スーツケースを出した時。
まだ旅は始まっていないのに、この時間が妙に楽しいことがあります。
しかも心理学の研究では、旅行や食事、コンサートなどの体験を待っている時間(anticipation)は、モノを買って届くのを待っている時間より、喜びやワクワク(anticipatory pleasure)を感じやすいことが報告されています。
新しいバッグが届くのを待つのと、来月ハワイへ行くのを待つのでは、同じ待つ時間でも少し性質が違うようです。
旅には、まだ起きていない出来事を頭の中で何度も楽しめるという特徴があります。
なぜ旅行は何度も楽しめるのでしょう
旅行には、少なくとも三つの時間があります。
行く前に楽しむ時間。
現地で楽しむ時間。
帰ってから思い出す時間です。
心理学では、良い出来事をその場だけで終わらせず、前もって楽しんだり、あとから思い返したりする心の働きを savoring と呼びます。研究でも、未来を想像すること、今を味わうこと、過去を思い出すことはいずれも、良い感情を長く味わう方法として扱われています。
そう考えると、一週間のハワイ旅行でも、楽しめる期間は一週間だけとは限りません。
予約した瞬間から始まり、帰国して写真を見返すところまで含めれば、旅はずっと長い体験になります。
ところが、旅の幸福感は意外と消えやすい
ここが少し面白いところです。
楽しかった旅行でも、日常生活に戻れば、その高揚感は次第に薄れていきます。人は良いことにも慣れてしまうからです。
しかし旅行の幸福感を追跡した研究では、予想していなかった出来事や偶然の体験があると、その後の幸福感が長く続くことが示されています。
予定していなかった店がおいしかった。
たまたま見た夕焼けがきれいだった。
道を間違えて歩いた先で、素敵な景色に出会った。
こうした出来事の方が、完璧に組んだ旅程より何年も覚えていることがあります。
旅は少しくらい予定通りにいかない方がいいのかもしれません
旅行前には、つい予定をたくさん入れたくなります。
せっかく来たのだから、ここにも行きたい、あれも食べたい、これも見たい。
でも旅の楽しさには、新しいものや予想していなかったものに出会うことも関係しています。日常とは違う新しさが、旅行中のポジティブな感情を高める要因のひとつになることが、旅行者の日々の感情を追跡した研究でも示されています。
予定を立てる楽しさと、予定を立てない楽しさ。
旅行には、その両方があるのでしょう。
明日を少し楽しみにすること
毎日が楽しいことばかりとは限りません。
忙しい日もあれば、気持ちが沈む日もあります。
そんな時、明日や来週、そのもう少し先に、何かひとつ楽しみにできる予定があるだけで、今日の気分が少し変わることがあります。
しかも、いつかやりたいと思っているだけではなく、日にちを決めたり、予約を入れたりして、実際の予定にしておく。
そうすると、その楽しみは急に少し現実に近づきます。
好きなレストランを予約する。会いたい人と日にちを決める。行ってみたかった場所へ出かける予定を立てる。
予定の日までには、待つ時間があります。
その待つ時間にも、私たちは少しずつ楽しみを受け取っているのかもしれません。
こうして少し先の出来事を思い描きながら今を過ごす心の働き(future-oriented thinking)も、心理学で研究されているテーマのひとつです。
少し先の未来に、楽しみをひとつ決めておくこと。
それも、心のウェルネスにつながる小さな習慣なのではないでしょうか。
